2024年10月19日(土)、20日(日)の二日間、肥前吉田焼窯元会館周辺にて、「吉田皿屋ひかりぼし」が、開催されました。
約4000個のボシで彩られた窯元会館駐車場
今年で、第6回目となった、吉田皿屋ひかりぼし。焼き物の産地ならではのアートイベントは、年々、知名度が上がり、今年も多くの人にご来場いただきました。
白い幕を開けた先に広がるのは、ボシを使ったイルミネーション。まるで、無数の星が輝いているようです。
日没に合わせて、一つずつキャンドルの灯を灯していきます
ボシというのは、同じ商品を大量生産する際に、使われていたもの。しかし、現在の主流は小ロット多品種生産。そのため、吉田地区では使われなくなったボシが、大量に眠っているのです。ひかりぼしでは、そんなボシに光を灯し、吉田皿屋地区の夜を彩りました。
普段は眠っているボシが、吉田の夜を照らしました
自由に並べられたボシの先にあるのが、窯元会館。
ここでは、ひかりぼし限定で、ミシュランで星を獲得された小岸明寛シェフの料理を、器付きで楽しむことができました。
福岡香椎で、Le restaurant français KOGISHIを2023年11月にオープンされた小岸シェフ
ひかりぼしでしか味わえない、限定メニュー。どれを食べるか、どの器で食べるか、選ぶだけでもワクワクします。
多数用意された器の中から、どれを選ぶか迷いますよね
メイン会場には、空間クリエイターの小原嘉元さん、フラワーアーティストの松本光さん、障がい者施設のPICFAさんのアートインスタレーションが展示されていました。
小原さんの展示では、日本の様式美を表現。嬉野市の旅館、和多屋別荘の代表取締役を務める小原さんは、旅館内の設えもすべて、自らがセレクトしています。
和多屋別荘の五色幕は、歌舞伎の揚幕のように「お客様を迎え見送る」象徴
ひかりぼしでは、和多屋別荘の入り口にある五色幕をはじめ、季節の美しさを表すようなアイテムが、多数展示。日本文化の美しさを感じさせられる空間が、ここにはありました。
毎年恒例となっている、松本さんの展示。鹿島市出身の松本さんが手掛ける作品は、大胆かつ繊細で、生け花の概念を覆されます。
手摘みした茶の枝を2300本使用した作品
「初めて、嬉野らしい作品を作りました」と話す松本さん。
今回のテーマは茶畑。嬉野の茶屋二郎さんの茶畑で使われなくなった茶木の上に、花を生けて、茶畑を表現。
そして、視線を上にあげると、茶木を使ったまるで化石のような立体物が。空間を有効に活用した松本さんの発想に、驚かされるばかりでした。
PICFAさんでは、アート活動をされている方の作品展示に加え、ライブペイントも実施。医療法人清明会きやま鹿毛病院内にオープンした障がい者施設で、デザインや絵画といった創作活動を行っています。
大勢の人に見られながら絵を描くのは緊張するのかと思いきや、「夢中でした」と話されていました。
小さい頃から絵を描くことは好きだったそうで、楽しみながらライブペイントができたみたいです。
大きなキャンバスに無我夢中で描かれていました
二日間という短い期間で、ここまで完成させられたイチゴの絵。フルーツのみずみずしさがリアルに表現されていて、キャンパスから飛び出てきそうなほどの迫力でした。
バス降り場近くで展示されていたのは、クリエイティブラボのanno labさん。
224porcelainとコラボして作られた風鈴を使った楽器。風鈴の厚みや大きさを変えることで音階が作られました。
焼き物で出来た風鈴
そして、吊り下げられた風鈴の一つひとつには、パソコン用のファンが備え付けられています。これはなんと、プログラムで風を制御し、曲を演奏するための設備だったのです。
この日、演奏されていたのは「きらきら星」。まさにひかりぼしにピッタリの曲ですね。
バス降り場からメイン会場に向かうまでの道沿い。
大学生によるアートインスタレーションも楽しめました。
井本彩奈さん、小形文乃さんは、吉田焼のイメージを映像と音で表現。今まで作ったことがないジャンルの音楽で、なおかつ映像と合わせるのが大変だったそうです。
釉薬が混ざって、新たな色が出来上がる様子をイメージして作られた作品
吉田焼との出会いから、今回のひかりぼしに至るまでの思いが詰まった作品でした。
荒木晃さん、園田一馬さん、太田政五郎さんは、吉田の映像と焼き物を組み合わせた作品を展示されていました。
実際に吉田の地を歩いて撮影した映像をスクリーンに投影
拾ってきた木の上には、1000個近くの焼き物の欠片が…。
焼き物が割れて、土になり、新たな焼き物として生まれ変わる…
そんな伝統の流れをイメージして、今回の作品を生み出されていました。
そして、各窯元では、ナイトマーケットを開催。
お買い物だけではなく、工場の見学ができることも、ナイトマーケットの魅力です。
同じ吉田焼でも、窯元によって異なる個性。それぞれの窯元を回りながら、お気に入りの器を見つけるのもワクワクしますよね。
まさに「吉田焼」の代名詞、水玉柄の器を作っているのは、副千製陶所。なんとこの水玉は、一つひとつ手作業で彫られています。懐かしさを感じる水玉柄ですが、デザインや色も豊富にあり、いろいろな種類で揃えたくなりました。
素敵な器ばかりで迷ってしまいます
副武製陶所の魅力は、可愛らしいイラスト。スタンプを使った絵付けを得意としており、可愛らしく目に留まるものばかり…。中でも一番人気は、お相撲さんシリーズだそうで、キャッチーなキャラクターは全種類、集めたくなりますね。
職人さんと会話しながらお買い物も楽しめます
3D技術をふんだんに使った224porcelainでは、シンプルでモダンなデザインの器が多く揃っています。1日目は、よなよなあん工房さんとコラボをし、器とぜんざいがお得に楽しめるセットも販売。少し肌寒くなるこの季節に、温かいぜんざいは心も体もほっこりさせてくれました。
今年も大人気のよなよなあん工房さん
えくぼとほくろでは、お得な値段で器が買えます
イベント会場から少し離れた場所にある、江口製陶所。長女の桃子さんが活躍している窯元で、釉薬の種類が豊富なことが特徴です。同じ器でも色の展開が豊富にあるので、家族や友達と、色違いで揃えるのも、アリかもしれません。
他にも、ボシをイメージしたぐい呑みと日本酒が楽しめる「ボシBar」やろくろ体験、焼き物を使ったピンポンゲームなど、吉田焼だからこそできる取り組みも実施。2日目には、佐賀大学生による書道パフォーマンスも行われました。
お酒好きのスタッフがセレクトした日本酒が楽しめるボシBar
初めてのろくろに、ワクワクする子供たちがたくさんいました
力強く描かれた文字
子供たちにも自由に、絵や文字を書いてもらいました
吉田焼を楽しんでもらうことはもちろん、子供たちの感性を育むようなアート展示にも力を入れているひかりぼし。きっと、子供たちにとっても忘れられない貴重な体験になったのではないでしょうか。
今回で、6回目を迎えた吉田皿屋ひかりぼし。子供から大人まで、多くの方にお越しいただき、今年も大盛況のイベントでした。
今年もマルシェを開催。フードやドリンクも楽しんでいただきました
めだかすくいも大好評
大定寺では、ひかりぼし限定の特別御朱印を調印
年々、バージョンアップしているひかりぼし。来年の開催はまだ未定のようですが、吉田皿屋の夜を彩るイベントが、吉田焼の未来を明るく照らすきっかけになることでしょう。
まるで星の上を歩いているみたい
今回、吉田皿屋ひかりぼしを開催するにあたり、ご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。