吉田皿屋ひかりぼし2025

2025年10月11日から13日の3日間、アートイベント「吉田皿屋ひかりぼし」が開催されました。

使われなくなった約4000個の「ぼし」に光を灯すこのイベントは、今では吉田焼の秋の風物詩。
今年は天候にも恵まれ、夜空の星と地上の星が共鳴するような、美しい光景が広がりました。

会場全体には、サウンドデザイナー・日山豪さんによる音楽が流れ、幻想的な光と音が一体となった空間に。
白い幕をくぐった瞬間、まるで異世界に飛び込んだかのような気持ちになりました。

窯元会館では、器をご購入いただいた方に小岸明寛シェフの特製料理を提供。
器と料理のコラボレーションを楽しむ人々で、会場は笑顔と香りに包まれていました。

さらに今年は、台湾のコーヒーブランド「ugly duckling」さんが出店。
ひかりぼし限定メニューとして提供された“アップルコーヒー”は、リンゴジュースの甘酸っぱさとコーヒーのほろ苦さが絶妙に調和した新感覚の一杯。
「こんなの初めて!」と笑顔で話す来場者の方の姿も見られました。

昨年も好評だった「ボシBAR」や嬉野のカフェ「心ここに在りき」も登場。数々のアート作品を眺めながら、お酒やドリンクも楽しめる贅沢な夜となりました。

【アート展示】

今年も、個性豊かなインスタレーションが展示されました。その数々を紹介します。

anno lab

昨年の“ドレミファソラシド”に加え、今年は“#(シャープ)”の音が追加された磁器風鈴。
透明感のある音色が静かに響き、焼き物の可能性を感じさせられる展示でした。

小原嘉元・三上真輝

嬉野の旅館・和多屋別荘に展示されているランタンアートを吉田で展示。
全28体の展示は、1体に2〜3週間をかけて丁寧に作られたもの。
柔らかな光に照らされた動物たちは、まるで今にも動き出しそうな躍動感を放っていました。

SAMI RINNE

アーティストインレジデンスで嬉野に滞在しながら製作した作品を展示。
同じ型を使いながらも全く異なる印象の作品を生み出す工夫や、焼き物の影で吉田の山々を表現するユニークな発想が印象的でした。

YOSHIDACT

焼き物でつくられた貝殻に光を灯したインスタレーション。
砂浜に並ぶ光の貝は、どこか懐かしく、幻想的な情景を生み出していました。

松本光

今年のテーマは“山脈”。色とりどりの花が空間を彩り、普段は静かな空間が華やかな場所へと変貌。。
茶の木を使ったダイナミックな生け花は、まるで山が呼吸しているかのような生命感にあふれ、来場者の目を惹きつけていました。

松尾恭子

「月」をテーマに、使われなくなった窯を幻想的な空間へと変化させた展示。
鏡を用いて“ひとつの月がいくつにも見える”仕掛けが施され、あまりの美しさにカメラを構える来場者の方が続出でした。

古賀蓮珠

福岡でCGや映像を学ぶ学生が、宇宙をテーマにした映像を制作。大定寺の壁面に投影し、夜の境内を照らしました。
一つひとつの動きにこだわりながら丁寧に作られた映像からは、作品づくりに対する真摯な思いが伝わってきました。

西木佳恵

93歳の西木さんは、50歳から水墨画を始められました。今回の展示では、これまでの作品の中から自信作を出展。
長年積み重ねてこられた技術力の高さと表現力を感じる作品が並んでいました。

辻陽子

猫をモチーフにした影絵作品を展示。楽しそうに遊ぶ猫の姿が映し出されています。
焼き物のかけらから生まれた猫たちは、今にも動き出しそうなほど生き生きとしていました。

Chiemi

焼き物のかけらを吊り下げたインスタレーション。一つひとつのかけらに銀箔を施し、下からライトを当てることで輝かせた作品。
その光はまるで、これからの吉田焼の未来が静かに輝いていくことを示しているようでした。

Shinpei

吉田出身のクリエイター。独学で学んだイラストとアニメーションを活かし、「ひかりぼし」をテーマに映像を制作。
ゆるく温かみのあるイラストのタッチが、吉田焼の親しみやすい魅力と心地よく重なっていました。

ito

福岡を拠点に活動する映像クリエイター。
吉田焼の長い歴史が未来へと流れていくことを願い、その流れを「川」に見立てて映像で表現してくれました。

【窯元ナイトマーケット】

毎年大好評のナイトマーケット。
買い物だけでなく、職人さんとの会話を楽しめるのもこのイベントの魅力です。

吉田焼の窯元は、それぞれが異なる個性を持っています。

ユーモラスなおすもうさんや泥棒猫のキャラクターで知られる副武製陶所

伝統の水玉模様を受け継ぎながら、現代の暮らしに寄り添う器をつくる副千製陶所

多彩な釉薬を使って可愛らしい表情の器を生み出す江口製陶所

3D技術を取り入れ、シンプルでモダンなデザインを提案する224porcelain

決まった様式にとらわれないからこそ、自由なものづくりができる。これが吉田焼の魅力です。

器を手に取りながら、職人と直接言葉を交わす。そんな交流が生まれるのも、ナイトマーケットならではの光景でした。

224porcelainでは、今年もよなよなあん工房さんとコラボしました

【篠笛演奏】

磁器製篠笛の音色が吉田の夜に響きました

2日目の10月12日には、篠笛奏者・副島花さんによる特別演奏が行われました。
この日、副島さんが手にしていた篠笛は、九州大学・杉本ゼミとの共同研究から生まれた“吉田焼の篠笛”。
焼き物の新しい可能性を探る中で誕生した、磁器の篠笛。

副島さんはこの篠笛の音の調整にも携わっていただき、今も大切に使われているそうです。吉田焼の篠笛は、滑らかな響きとクリアな音色が特徴。

演奏されたのは、雅楽の『越天楽』、童謡『赤とんぼ』、そして誰もが知る『ふるさと』の3曲。
吉田の夜に磁器製篠笛の綺麗な音が響いていました。

第7回となる「吉田皿屋ひかりぼし」は、3日間で約4,000名の方にご来場いただきました。
たくさんの温かいお言葉をいただき、心より感謝申し上げます。

地域の皆さまをはじめ、アーティスト・窯元・学生など、多くの方々のご協力によって、今年も無事に開催することができました。
アート・音楽・食・器を通じて、吉田焼の魅力や吉田の温かさを知っていただけたのではないかと思います。

ナイトマーケットでも美味しい料理やドリンクなどが提供されました

ご協力いただいた皆さま、そしてご来場いただいた皆さま、本当にありがとうございました。