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異国で芽生えた夢を胸に、吉田で新たな歩みを進めるデザイナー

オランダに留学し、焼き物に興味を持った寺本太一さん。帰国後は有田の商社で経験を積み、現在は吉田の窯元で働きながら、波佐見の自宅兼工房で生活されています。そんな寺本さんに、海外での経験や現在の生活についてお伺いしました。

焼き物に興味を持たれたきっかけを教えてください。

寺本さん20代の頃、デザインの勉強でオランダに留学していたのですが、小さな工房でインターンをさせてもらう機会がありました。そこで焼き物と出会い、「自分は焼き物のデザインをしたい」と思ったんです。

それまでは焼き物のデザインを考えていなかったのですか?

寺本さんもともとプロダクトデザインを専攻していたので、デジタルよりは物体としてのデザインに興味がありました。ただ、その中でどの分野に進むのかははっきりしていなかったんですよね。焼き物に触れた経験で、ようやく自分の進む道が見えたんです。

留学後はすぐに日本へ戻られたのでしょうか。

寺本さんオランダで「焼き物をするなら日本が良い」と言われ、帰国を決めたんです。就職活動では苦戦しましたが、有田の商社に採用いただき、そこで大きな経験を積みました。任された仕事も多く、自分のアイデアを実際に形にできる環境だったんです。

その結果「Terra」というシリーズを商品化していただき、多くの方に使っていただけるようになりましたね。今でも販売していただいているので、たくさんの方が手に取ってると思うと、本当に嬉しいです。

現在は吉田で活動されているんですよね。

寺本さんはい、副武製陶所でお世話になっています。陶器市で自分の作品を販売したとき、力不足を痛感し、技術を磨くために働かせていただくことにしました。

ベテランの方が多いので、日々学びがあり刺激的です。まだまだ自分は未熟なので、これからしっかりと力をつけて、少しでも会社のお役に立ちたいと思っています。

マーケティング部にも所属されているとか。

寺本さんそうなんです。今はインターナショナル課の課長を任されています。海外からアーティストが訪れるアーティスト・イン・レジデンスの取り組みがあり、留学経験を活かして吉田焼を盛り上げていきたいです。

あと実は、留学時代に倉成さんとお会いしたことがあって、ここで15年ぶりに再会できたのも大きな縁だと思います。当時からアイディアマンだと思い、尊敬していたので、倉成さんが関わっている吉田焼のこれからがますます楽しみです。

工房と住まいも一緒にされているんですか?

寺本さんはい。作家になると決めたときにアパートを引き払い、工房を借りて住むことにしました。

自分でリフォームをしながら環境を整えているところです。夜は工房で3Dデータ制作の仕事をすることも多いですね。224の辻さんからもお声をかけていただき、デジタルの面から焼き物に関われるのも嬉しいです。

今後の目標を教えてください。

寺本さん「寺本太一」という名前を聞いたら誰もがわかる。そのくらい有名になりたいと思っています。そのためには、多くの人に愛される作品を生み出し続けることが必要です。

まだ挑戦は始まったばかりですが、副武製陶所でしっかり学びながら工房も充実させ、夢に近づいていきたいです。